ボニー・レイットがワーナーとの決別の末に選んだ次なるレコード会社はキャピトルであった。
そこでの第一弾がこの「Nick of Time」である。彼女は泥臭いブルースやR&Bを好んで歌い、演奏するが、この作品は時代に迎合するような曲が多い。そのためブルースなど下敷きにしながらも非常にコンテンポラリーな色合いが大衆を射止めたのかもしれない。しかし今でも十分に聴ける代物だ。このアルバムはアカデミー賞の「アルバムオブザイヤー」を含む三部門を獲得している。バックはハービーハンコックやグラハムナッシュ、デビットクロスビーなど
表題曲のNick of Timeは新しいボニーの幕開けだったのかもしれない。そのボーカルは実に落ち着いているが「ここからいくわよ」という姉御的展開は背中がゾクゾクする思いだ。そんなひたむきさと彼女の執念深さがひしひしと歌声を通してくる。一瞬でも聴き逃すまいと私を必死で耳を傾ける。BGMとしてもいける曲だが、それを許さないものがこの曲にはある。実はこのアルバムでボニー自身が作った曲はこれともう一曲しかないのだが、この曲の存在感は他曲を圧倒的に引き離している。
1. Nick of Time
2. Thing Called Love
3. Love Letter
4. Cry on My Shoulder
5. Real Man
6. Nobody's Girl
7. Have a Heart
8. Too Soon to Tell
9. I Will Not Be Denied
10. I Ain't Gonna Let You Break My Heart Again
11. Road's My Middle Name